しんちゃん

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私たちの願い 〜一日も早く治療法の発見を〜
 慎大郎たちの病気「筋ジストロフィー」は、全身の筋肉の維持ができず、きのうできたことがきょうはむずかしくなるというやっかいな病気です。現代の医療技術の最先端である遺伝子に起因する病気であることは明らかにされていますが、原因と治療法については、まだ解明されていません。
 そんな難病を抱えた慎大郎ですが、彼自身のもつ個性・体内時計はまるで大河の流れるごとくゆったりと静かに流れ、この忙しい現代に「何もあわてる必要はないよ!」と明るく訴えかけてくれます。難病に対する悲しさ・悲惨さのかけらもなく、人間が成長することとは、いったいどういうことかを我々に教えてくれます。
 親が子どもを教育する以前に、わが子から課題を与えられ、考える毎日です。この写真集は、そんな慎大郎を的確にとらえたものと信じています。
 この写真集は、ほとんどの子をもつ親がそうであるように、「わが子自慢」であるかもしれません。しかし、決して同情を請うのではなく、正しく病気を理解していただきたいのです。
 今後、菊池和子さんとの共同の仕事として、巡回写真展をしたり、この写真集の普及に努めたりしていきたいと思います。そうすることが、ひとりでも多くの人にこの病気を理解していただき、一日でも早い治療法の発見の一助になればと願っています。
                                   加藤憲司
                                   加藤道子

命に寄り添って
 1999年の春、私は、赴任した東京・調布市立石原小学校で初めて慎大郎君親子に会いました。私は3年生の担任でしたので、6年生の慎大郎君親子とは、なかなか話すチャンスはありませんでした。
 しかし、会うたび、なんとも言えないおおらかさを感じて、写真を撮りたい気持ちがふくらみました。躊躇の末引き受けていただき、それから約1年間、折にふれ慎大郎君ご家族と行動をともにしました。
 慎大郎君中心にすべての生活を送っているお母さん、休みの日には自由な時間を妻に保証しようと慎大郎君を引き受けるお父さん、いつも「楽しかったね!」と笑顔いっぱいで語りかけてくる慎大郎君に、私のほうが癒され人間性を回復することができました。
 しかし、発熱すれば緊急入院せざるえない現実、前にはできていたことができなくなっていく現実の前に、常に命そのものを見つめてきた加藤さん一家の心情が、痛いほど伝わってくるようになりました。毎日大量に飲む薬のなかには、まだ筋ジストロフィーの薬はなく、ビタミンや抗アレルギーなどの健康維持の薬でカバーしているのです。
 「きょう一日を楽しく、そして、あしたも続くように」と一日ずつ命を紡ぎながら、慎大郎君の笑顔に助けられて、ご両親は暮らしています。「一日も早く治療法の発見を」という一家の切実な願いを、私は表現できたのだろうかと自問しています。せめて、この写真集が難病への理解を助け、治療法の発見へわずかでもお役に立てれば幸いです。
                                   菊池和子